近づいてきてタクシーだと判った。
空車みたいだ。
手を上げようかと思ったが金ギリギリ
しかなくてネカフェまでいくらかかるか
不安だったから迷った。
ああ通り過ぎちゃうと思ったら、
すれ違う時に不自然にスピードを
落としたんだよ。
あれっと思って運転席を見ると
髭面のおっさんがこっちを見て何か合図してるの。
車の進行方向(つまり俺が来た方)を
指差してその後左方を指差した。
立ち止まって通り過ぎた車のテールランプを
眺めながら首を傾げていると、
車が100メートルほど先で不意に左折した。
ウィンカーを出さずにいきなり曲がった。
俺はさっきの合図と照らし合わせて、
ついて来いということかなと思ったが、
正直怪しくて躊躇った。
構わず先を急ごうと前を見たが
暗い林を見るとさっきよりも不気味に
思えてよし、と引き返したんだ。
角を曲がるとなんと200メートルも先に
車が停まってた。
ますます怪しいのだがここまできたらと
そこまでよたよた歩いていった。
バッグのベルトが肩に食い込んで痛かった。
車の側まで行くと運転席の窓が下りて
おっさんが顔を出した。
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