小説は米国空軍傘下、秘密観測基地レーダー網に
ソ連領空を行き来する正体不明の飛行体が
捉えられたところから始まる。自国偵察機ではなく
大韓民国の民間飛行機であることが即座に確認された。
しかし、米空軍は「1級危険区域」に向かって飛んで行く
友好国の民間機になんの警告信号も送らなかった。
ソ連極東軍防空司令部もやはり
平凡な米軍偵察機ではないことは知っていた。
しかし、民間機に偽装した偵察活動という疑いも消さなかった。
撃墜命令を受けたソ連空軍パイロット、
ゲンナジー・ オシポビッチは並んで飛行した「敵機」が
急上昇して速度を下げるとすぐにミサイル二発を発射する。
作家は本来の航路を外れてソ連領空に深々と入った
大韓航空機のミステリーとともに、
事件を政略的に利用する韓半島周辺列強を非難する。
日本の中曽根総理は大韓航空旅客機が撃墜された
事実の報告を受けても自国がソ連を盗聴している事実が
ばれることを恐れて口を閉ざす。
再選が不透明だった米国のレーガン大統領にとっては
全世界的反共世論に再び火をつける好材料であった。
韓国のテレビはソ連の代わりに「第3国」の戦闘機が
大韓航空機を撃墜したと報道した。
それさえも当時の全斗煥(チョン・ドファン)大統領が
ほうきを持って町内を清掃したというニュースの次であった。
「強大国は大韓航空機撃墜事件を各自の食欲に応じて
歪曲しました。ソ連、日本、米国さらに我が国もです。
ニュースが出るとすぐに強大国の陰謀と下心で変えられます。」
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