技術を流した側と受け取った側の関係を
立証するのは難しい。
裁判は長期化が予想されるが、新日鉄側は
「明らかな形で情報が流出した証拠をつかんでいる」
として勝訴に自信を見せる。
元社員はなぜ技術を漏らしたのか。
「結局は金だろう」。新日鉄幹部らはそう吐き捨てる。
新日鉄が勝訴した場合、ポスコにとっては大打撃だ。
韓国や中国の鉄鋼メーカーの成長はめざましく、
今年10月に予定される新日鉄と住友金属工業の
合併の契機ともなったが、
収益の柱は品質要求の低い建設向けが中心。
ポスコとしては企業ブランドを高める意味でも
方向性電磁鋼板は欠かせない領域だ。
「この事業から撤退を余儀なくされれば、
成長戦略に狂いが生じる」(業界関係者)。
中・韓メーカーは、最終的に
日本メーカーの牙城である自動車向けの
薄板分野に手を広げようしている。
特許侵害も辞さない強引な手法が目立つが、
新日鉄が勝訴すれば、
「彼らも態度を変えざるをえない」(同)。
日本メーカーの巻き返しにつながる可能性もある。