【いい話】姪「私のこと嫌いになったの?お父さんもお母さんも誰もいなくなったのに…おじさんまでいなくなったら一人ぼっちになっちゃう…そんなの嫌だ…」 俺「………おじさんと一緒に住むか?」

社長が馬鹿でかいだみ声で応援して、途中で裏声になって周りが大爆笑。
帰ってからメイがなんて恥ずかしいことすんのよ、ばかって笑ってたのを良く覚えてる。

あと、初潮が来た時の俺のオロオロッぷり。
ある時トイレに入ったら、トイレの床が血まみれでメイがいない。
なんじゃこりゃ!と思って慌てふためいて、とりあえず社長の家に行ったら男は出てけって奥さんと娘さんたちに追い出された。
あとになってその時の俺の様子をネタに今も茶化されてるよ。

奥さんに教わって徐々にメイが料理をするようになった。
中2の秋だったかな。
突然、クリームシチューを市販のルーではなく手作りで作ることに凝り始めた。
奥さんも作り方は知らなかったが協力していろいろやっていた。

できたシチューは十分うまい物だったがメイはなぜか納得しない。
さすがに毎週シチューが続くとなんでだ?と聞いてみたが、理由は教えてくれなかった。

そんな話を奥さんとしゃべってたら実は、と教えてくれた。
母親の得意料理がクリームシチューだったのだ。
何年も前のことだから、作り方も味もよく憶えていない、けれど何とか作ってみたい。

健気だね、この娘っ子はほんとに。
だからしばらくシチューは続いたが文句言わずに食べてた。

ある日に作ったシチューは自信作というか、記憶にあるシチューの味に近かったんだろうな。
「どう、おいしい?どう?」てしつこく聞いてくる。
もちろんうまかったのでそう答えたら、妙にうれしそうにしてたからついポロっと聞いた。
「お母さんのシチューができたか?」って。

そしたらメイのやつ、硬直してなんか泣きそうな顔になったんだ。
おもわず俺の方がおろおろしたな、あの時は。

なんで知ってるの?ってメイに聞かれて、奥さんから聞いたことを話して思い出の味だろ良かったなって言ったんだよ。
そしたらなんて行ったと思う?

「ごめんなさい」

なにがごめんなさいなんだ?って思うよな。
さらに「ごめんなさい、マサトおじさんがいるのに、お母さんのことなんか思い出そうとして」だって。

メイの言うことによると、俺に世話になりまくってるのに今更両親のことを引っ張り出すようなことをしたら、俺が嫌がるんじゃないかって思ったらしい。
いやいや、そんなこと思うならシチュー食わすなよ!と言うか俺がそんな風に考えると思ってたのか!
なんかそんな感じで無性に腹立たしくなって、哀しくなったな。
だからこう言った。

「メイがお父さんやお母さんのことを憶えていてあげなきゃどうする?なんでそこで俺に遠慮するんだ?俺がそんなことでメイのことを追いだすとでも思ってるのか、俺をバカにすんな。遠慮なんかすんな、バカ、もっとお父さんやお母さんのことを教えろ。俺の兄貴と義姉さんでもあるんだぞ」

こんなようなことを言った、はず。
多分、同居を始めてから初めて怒鳴ったと思う。
で、メイ泣きながら謝る。
俺、謝んなって言いながら泣きそう。

その後、シチューは定番になりました。

シチューの件を思い出すとちょっと今でも切なくなるな。

ちなみにそれ以前はメイが自分から両親の思い出なんかを話すことはなかった。
ずっと遠慮していたんだと思う。
でもそれ以降はそんなことはなく、よく話してくれるようになった。

それ以降は特に大きな出来事もなく高校進学。
メイ16歳高2、俺30歳の年、マサトのおっさんにある出来事が起こる。

なんとマサトのおっさんに彼女ができる。
おっさんにとっては10年ぶりのカノジョである。
期待に添えなくて悪いが、社長の娘さんたちではない。

付き合う前に俺の家庭の事情については話していたし、付き合いだしてから何度か家に招待してメイと一緒に食事したりもした。
ミキ(彼女仮名)とメイも仲良くなってなんか電話とかメールをしたりもしていたらしい。

交際は1年ほど続き、本気で結婚を考えた。
メイにもそう考えていることを話し、賛成してくれた。

ある時なんぞ、メイの方から社長娘と土日は遊んでくるから、マサトおじさんもミキさんとデートしてきたら?なんて言いやがったこともあった。

そんな有頂天なある日、ミキから恐ろしい質問が…
「私とメイちゃんのどっちが大事なの?」

冗談混じりの問いかけなら良かったかもしれない。
だけどあいにく、ごく真面目な問いかけだったようだ。

なにこの腐ったドラマみたいな展開?なんでそんなこと聞く?なんで?

どうもマサトのおっさんは土壇場に弱いというかオロオロしてしまう。
あの時はほんとに思考がショートしたかと思ったよ。

選べるわけないだろ。
頭の中で呟いたつもりが声に出てたらしい、しかもはっきりと。

「うん、そうよね」とミキは答えて、その後はなんでもないようにデートを続けた。

そのデートから二日後、電話で破局を切り出されて終わった。
やっぱ俺がメイにかまいすぎてるように思えて、我慢できなくなったんだと。
うん、逆の立場なら俺もそう思うわな。
理解できるし、なんか俺もあの問いかけをされてから急速に冷めたのがわかったからあっさりしたもんだった。

ところがあっさりしなかったの姪っ子なわけだ。

まあ妙に勘がいいというのか、やっぱ女だからか、俺がミキと別れた、俺もミキもお互いのことが好きでなくなったから、なんて言い訳を信じない。

やっぱり、どこかで自分が俺の足を引っ張ってるみたいな負い目を感じてたのかね。
本当の理由は死んでも教えるつもりはないから押し切ったけど、のちにばれる。
なぜならメイがミキに電話して直接尋ねやがったから。

どんな内容の話だったか詳しくは分からないが、ミキにとってメイを大事にする俺に耐えられなかった的なことらしい。
メイ、勝手に追及して撃沈。

高3女子に泣きながら私のせいでごめんなさいとか謝られて俺にどうしろと?
泣き虫なのは大きくなっても変わらないなあ、と妙にさばさばしていたのは憶えている。

とりあえず久しぶりに頭をなでてやりながら、何もかもひっくるめてメイのことを引き取ってるんだから気にすんなって言ってやった。
それ以降、なにも言ってこなくなったがあいつのことだからまだ気にしてるだろうな。

いやあ、なんかね、女心のわからんおっさんの自爆話になって申し訳ない。
なんか改めて俺の恋愛スキルのなさに泣けるぜ。

話を戻す。
メイは高卒後の進路について、看護学校に行きたいと言い出した。
この頃には遺産や保険金があるから進学するにせよなんにせよ、お金の心配と遠慮はするという話はしていた。
その上で、自分がやりたいと思うことがあるなら行けばいいと思っていた。

無事に看護学校に進学した頃、なんというかどういうか、ついにあれが来た。

「彼氏、紹介したいの」

キタ、キタヨ、おいおい、おれどうしたらいいの。

まあメイもハタチになった。彼氏の一人もいるだろう。
なんかニヤニヤしながら携帯手にしてわざわざ外にでて電話をしてるのも知ってる。
カベ薄いからな、うちは!

しかし、しかしだ、直に会うとなったら話は別だろう~~~

いかん、当時を思い出して動揺してきた。

紹介された彼氏、22歳の大学生。
ぶっちゃけイケメンではないが、なんと言うか人が良さそうなやさしい顔つき。
ただし柔道をしているとかで体格はいい。
体重70㎏の柔道選手って無茶苦茶いい体してんなった思ったわ。

なんだな、さみしい限りだが、お似合いの二人だなって思った。
3人でビール飲んで、なんか途中から社長と奥さんが乱入してきた酒盛りになったが、俺はうれしかった。
メイも彼氏も社長夫妻も楽しそうだったしな。

その後もメイと彼氏は交際を続けてた。
メイは卒業してある病院に勤務、住まいもその病院の寮に移った。
彼氏も無事に就職した。

そして去年の春、家に彼氏を連れてメイが帰ってきた。
「私たち、結婚します」だとよ。
もうなんか彼氏がメイの尻に敷かれてやんの。
それでもタカシくん(彼氏仮名)、顔真っ赤にしながら俺に「かならずメイを幸せにします。おとうさん、娘さんを僕にください」だってさ。

なんかね、もう俺むっつりしたままいるつもりだったのにね、泣いてんの。
そのくせにね、バカなこと言ってんだよ。

「俺はメイのお父さんじゃないよ、叔父だよ。ご両親にはちゃんと別にいるんだから」
いやほんとバカだな、わざわざ言わなくてもね。

案の定、メイのやつ怒ったな。
なんでわざわざそんなことの言うのって。
「私にとってマサトおじさんはもう一人のお父さんなの。私には二人お父さんがいるの。タカシにもうそう説明してるんだからこれでいいの」

おとうさん だってよ。
この時、初めて呼ばれたな。
て言うか呼ばさなかったんだよ、兄貴と義姉さんに悪いしさ。
メイにはちゃんと両親がいたんだってこと忘れないでほしかったから。

もう俺、絶句して泣いた。

書いてる今も思い出して涙出てきた、やばい。

なんかタカシくんも泣きだしてね、もちろんメイも泣いてる。
もう俺も含めて最初の堅苦しい空気はどこ行ったって感じでね。
うん、幸せだなあってバカみたいに思ってたわ。

後日、社長に報告しに行ったら、社長も奥さんも我が事のように喜んでくれてね。
なんていい人たちなんだろう。

ああ、気になっている人のために、社長の娘さんたちはこの時点で二人とも結婚済み。
長女には3歳の男の子がいる。

そうそう、婚約した祝いにってことで俺とメイとタカシくん、社長夫妻に長女一家次女夫妻の大所帯で一泊旅行にも行ったんだ。
もう社長一家は親族みたいなもんだしね。

体育会系の社長、タカシくん、次女旦那の3人は意気投合して酔いつぶれて大変だったな。
奥さん娘さんたちはメイと長女息子を囲んでめちゃくちゃ盛り上がってた。
俺と長女旦那はなぜか二人でしんみりと酒飲んでた。
最後はみんなが俺のことお父さんお父さん呼んで囃したてやがってさ。

うん、楽しかったよなあ。

おっさんの長話、ごめんよ。
もうすぐ終わる。

先週、結婚式だったんだよ。
レストランウエディングってやつ。
それでもどっかから神父呼んでバージンロードみたいなのわざわざ作ってさ。
メイの手を引いて歩くんだよ。

涙こらえるの大変だった。

きれいになったよ、メイのやつ。

式と言うか披露宴もさ、メイとタカシくんの友達や社長娘さんたちが張り切っていろいろ準備してくれた手作りでね。

和気あいあいって感じだった。
タカシくんの御両親もざっくばらんな方たちでね。
素晴らしい娘さんを育てられましたね、って言ってくれたよ。

宴もたけなわってとこでさ、あれだよ、新婦からのお手紙だよ。
新郎新婦がさ、まずは友達のところへ行って、素敵な式をありがとうってやって次に娘さんたちのテーブルへ。

「長女姉ちゃん、次女姉ちゃん、お姉ちゃんたちのおかげで私はどれだけ助けられたでしょう。二人とも大好きな、本当のお姉ちゃんたちです」ってさ、かなり省略したけど、でもって抱き合って泣いてたよ。

タカシくんもそれみて泣いてた、なかなか涙もろい奴だよ彼も。
俺も泣いてたけどな。

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