新聞記者の机上の言説よりはるかに重い、3.11を体験した農家の言葉に宿るリアル
しかし、結果的に、その記事を載せた新聞が名古屋一帯の読者に配達される頃、北朝鮮が日本列島の頭越しで実際にミサイルを発射した。
新刊『朝日新聞がなくなる日 – “反権力ごっこ”とフェイクニュース』(http://amzn.to/2vKNTwd)で、朝日新聞の言説が旧来型の「反権力」「護憲・平和」フレームワーク思考に陥り、眼前のリアリティーが乏しいことを指摘させてもらったが、まさにそのことを象徴するような結果だ。
今回の事態に自分だったら、どう向き合うか。きのう旧知の福島県の農家、藤田浩志さんがJアラートについて、こんなツイートをしていたのが私は心に響いた。
“農民&野菜ソムリエ 藤田 浩志(こうし) @kossyvege
Jアラートはあくまで警報だからそれをどう活かすかは個々人次第。俺はこんなふざけたミサイルで死にたくないし家族も死なせたくないし折角警報が鳴ってるのに何もせず後悔したくないので、事前にイメージトレーニングして冷静に対応し最善を尽くす。東日本大震災の教訓を無駄にするわけにはいかない。
17:44 – 2017年8月29日”(https://twitter.com/kossyvege/status/902451939438280704)
彼の言葉には保守とかリベラルとか思想的なものはない。そこに宿るのは、未曾有の震災を経験した人ならではのリアリティーだ。
朝日新聞がどれだけ自分たちの思う方向に声を並べ立て「角度」をつけようとしても、現実を知る一つの言葉の前に机上の思惑は瓦解してしまう。私自身は朝日新聞とは逆のポジションをとることは多いが、この藤田さんの言葉の重みを受け止め、リアルを意識する大切さを忘れないように自戒したい。
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