先の大戦に対する各国の歴史認識問題が、アジアの国際関係に影を落とし続けている。
米スタンフォード大学アジア太平洋研究センターは、日中韓と米国、台湾の高校歴史教科書
比較研究プロジェクトを実施し、日本の教科書は戦争を賛美せず、最も抑制的だと指摘した。
研究チームの主要メンバーである日本史学者ピー ター・ドウスPeter Duus氏に研究成果を、
元米紙東京特派員ダニエル・スナイダー氏Daniel C. Sneider
(スタンフォード大学アジア太平洋研究センター副所長)に研究の趣旨を報告してもらった。
論点スペシャルとして紹介する。
日本の教科書
今回比較した中では日本の教科書が最も愛国的記述がなく、戦争の賛美などは
全くしていない 。
日本の中国進出についてのくだりは全く事実をそのまま伝えており、当時の軍と
政府のリーダーたちの責任だとしている 。
非常に平板なスタイルでの事実の羅列であり、感情的なものがない。
韓国の教科書
韓国の教科書は特にナショナル・アイデンティティーの意識の形成に強く焦点を当てている。
自分たち韓国人に起こったことを詳細かつ念入りに記述している。
韓国の教科書は、中国で起きた戦争に関する記述が希薄だ 。韓国は日本の中国に対する行為に
は興味はなく、日本が自分たちに行ったことだけに関心がある 。
私が驚愕した一つの例は、主要な韓国の教科書には広島長崎の原爆投下の記述がないことだ。
それほどまでに彼らは自己中心的にしか歴史を見ていない。
米国の教科書
米国の教科書は日中戦争について多く語っていない。米国の教科書は、
第二次世界大戦について、アジアよりもヨーロッパでの戦争の方により焦点を当てる
傾向がある。
ニュルンベルク裁判についてはたくさんの記述があるが、東京裁判については大変少ない。
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